非効率的に生きよう
3月半ば。入試や卒業式を終え、次のステージに進む前の一区切りとして髪を切ったり、カラーリングをしたりするのにご来店される方が多く、美容室は1年の中で2番目に忙しいシーズンだ。今年は特に大学入学前の初カラーをしに来られる若いゲストが多く見られる。偉いなあと思う。ちゃんと美容室に染めにくるのだなあ。緊張した面持ちでご来店され、帰りには明るくなった髪にウキウキとソワソワを全身で発しながら出て行かれる姿を見ると、今まで何百人何千人?のお客さんの髪を染めている私たちでも、なんだか初心に帰ったような、照れ臭い気持ちになる。美容室の仕事ならではの達成感。幸福感。嬉しそうにしてくれてありがとう、もっと上手くなるね。と、こちらも気持ちを新たにする。私たちの仕事はこういうものだ。自分の手で「創り出したもの」を受けとった相手の表情を目の前で見て、どうだったかの結果をその場で受け取る。FaceToFaceのやりとり。これからの時代においては、価値と難易度が高くなりそうな仕事ではないかと思う。
私自身は便利なもの、効率的なものが大好きだ。Appleも好きだし、Amazonプライム会員だし、Paypayも使った。SNSは網羅しているし、スマホを切らない日は無い。テレビは見ないけどツイッターやLINEニュースで錦戸くんがNEWSを脱退することも知った。 私が初めてネットに触れたのは中学生のときで、友人にやり方を聞きながら独学でホームページも作っていた。こんなことしていた中学生女子は周りにいなかったが、現実の世界とは別に私はネットの世界で友人を作ることにも成功した。「出会い系サイト」という言葉はその少し後に世の中に出回った。
今やほとんどの人がネットで繋がらない日なんて無い。これから先もずっと無いだろうと思う。昔はパソコンでさえダイヤルを回さなければ繋がらなかったが、今やwifiが勝手に探して繋げてくれる。きっともう全ての人が(通信障害や災害を除いて)繋がらなくなる日なんてこないのだろう。画面を覗けば、だれかの日常を垣間見ることが出来る。そしていいねを送って同じ時を過ごす。
非効率的に生きよう
効率的で洗練されていて無駄がない仕組み・環境と、いつどんな時でも誰かと繋がる簡単なコミュニケーション。なんて素晴らしい世の中になったのだろう。テクノロジーは今も日進月歩で、ついに映像を見たら匂いまでするようになる。どこでもドアが現実になる日はそんなに遠くないかもしれない。すげえ。やべえ。こうなってくると本当に何もしなくて良くなる。先日ご来店のお客様は理学療法の学校に行っていたらしいが、そのうち理学療法士は無くなる職業だそうだ。ほとんどがお医者さんに集約されると。本当に人間が行うことが減る。仕事が減るというのはどういうことか?人間同士の関わりも減るということだ。レジのチェッカーさんは既にいなくなってきているし、コンビニも無人化していくだろう。私は思う。これから価値が高くなるのはモノやお金ではないな、、、人間と人間の繋がりだな、、、だって繋がるところがネットしかないんだもん!でもネットで人肌には触れられない。顔が見えない相手と罵り合ったところでそこに愛は生まれない。陰湿な感情を抱えて画面覗き込んで性格悪くなるだけだ。相手の顔みて心境を想像して、ツライ思い抱えながらもぶつかり合うことでしか得られない「何か」がとても貴重になるということだ。めんどくさい、しんどい、たまに泣く、、、そんな生き方を非効率的生き方と呼ぼう。そんな生き方が希少価値となるだろう。いや、もうなってるか。そして私はそんな生き方を選んでいきたいと思っている。回り道でも、すぐに形にならなくても、失敗こいても、うへ〜もうダメかもしんね〜死ぬかも〜!!とかなっても、その中でしか触れ合えない何かが尊いと思うのだ(たぶん)、、、、
だって美容師って、誰かの髪に触れて、言葉を交わして、魔法をかけることが出来る仕事だ。
無駄の無い日常の中ではきっと魔法は生まれない。(たぶん)
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